2011年4月25日月曜日

日本は本当に安全か

 文部科学省は19日、福島県内の13の小中学校・幼保育園に対して、屋外活動を1日1時間程度に制限するように同県教育委員会に通知した。
 政府は20日、東京電力福島第1原子力発電所の事故後避難指示が出ている半径20キロ圏内を22日警戒区域に変更し、立ち入りを原則禁じる方針を固めた。

 日本人には広島・長崎に投下された原子爆弾、その放射線に汚染された「黒い雨」の脅威を描いた井伏鱒二の同名小説、米国の水爆実験による理不尽な被爆によって死亡した久保山愛吉さんの第5福竜丸事件など、壊滅的で悲惨なイメージが『原子力・被爆』について刷り込まれている。
 それらと今回の原発事故と、どのように関連付けていいのか未だに確信できないでいる。それは政府、保安院、東電の情報開示に『権威』がないからだ。上記2つの措置を被災者が素直に受入れることができないのも信頼するに足る『権威』が感じられないからに他ならない。

 3.11の大震災から1ヶ月経って観光業の被害が甚大になっている。とりわけ外国人観光客の減少が著しく想定以上の風評被害が全国的に広がっている。それに対して被災地以外―日光や大阪城、ハウステンボス等は震災の影響が全くないということを国の内外にはっきりアピールするべきだ、特に海外に対して外務省は有効な手段を講じるべきだ、という批判がある。

 日本は、太平洋の西のはずれ、ユーラシア大陸の極東に浮かぶ小さな島国である。地震の多い国でおまけに54基の原子力発電所が稼動している。M9.0の大地震と最大規模の津波に襲われたばかりで福島第1原発が被災して制御不能の事故を起こしている。震度5前後の余震が頻発しM7以上の直下型の東南海・南海地震がいつ起こってもおかしくないと予想されている。全国に配置された原発は津波の規模が2Mから15M、地震の規模もM5~M7とバラバラの基準で設置されている。東日本大震災の被災地以外でもいつ地震が起こるかわからず、それによって原発が甚大な被害を被る可能性を排除することは極めて難しい。今起こっている原発事故終息の確かな見通しは全く立っていない。

 こんなイメージで日本を見ている海外の人たちに「日本は安全です」と自信をもって発信できる人がいるだろうか。

2011年4月18日月曜日

未必の故意

 「放射線がうつる」と学校ではやし立てられた東日本大震災の被災児童が転校先から別の土地に移されていたという報道は痛ましい。大人の心ない会話が子供たちの発言につながっていたとしたら悲しい。しかし我々国民は福島第一原発事故に関して、まだ誰からも真実を語られていない。国の内外に飛び交う風評は政府その他要職にある人達の責任だ。

 もし福島第一原発が『個人の所有』だとしたら『未必の故意』として重罪に処せられる事は間違いない。『想定外』と言い訳しようと状況次第では殺人罪にも相当する重大事故であるにもかかわらず政府の東電に対する姿勢は極めて甘い。厳しい責任追及もないうちに国有化や損害賠償の支援策が論じられるのは一体どうしてか。東電は企業廃絶(=企業の死)、そこからのスタートが当然とするのが市民感覚だがそうなっていないのは何故か。(首都圏の電気事業会社が東電である必要はない。)

 現在の法律では法人という組織に対して刑法上の罪を問うことはきわめて困難な体系になっており、犯罪を犯した企業の経営者に法的および道義的責任を問う以外に方法がない。加えて原子力に関わる事故に関しては別に「原子力損害賠償法」があってそこに「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない(損害を賠償する責めを負わなくてもよい)」と定めてある。又賠償額については、加入が義務付けられている原子力損害賠償責任保険の補償額―1工場・事業所当り1200億円を賠償に当てることができるという規定がある。

 東電の経営者は当然こうした法律を熟知している。今回の地震と津波は上にある『異常に巨大な天災地変』に相当すると認識しているに違いない。被害者への損害賠償に関しても法の定めにある『1200億円』を前提としているように感じる。そうでなければ東電社長がお詫び会見でみせた開き直りとも見えるふてぶてしい態度は理解できない。

 企業の犯す犯罪がこれほど甚大で広範に及ぶという考えは今ある法体系の底流にはない。損害が何兆円にも上るという事態にも考え及んでいない。東電の犯した犯罪は現法体系とは別次元にあると、国民は認識している。

2011年4月11日月曜日

大相撲八百長問題の本質

 世界の国々から届けられる東日本大震災へのエールに心打たれる。はるか遠くの名も知らない、多分我国より貧しいに違いない国の子供たちのメッセージや乏しい中からの救援物資提供には胸がジンとくる。しかし視点を変えればそのような応援や支援を引き出すような報道がされているという事に他ならない。
 政府は原発事故の正確な情報を開示するべきだ。今のようなあいまいなこま切れの情報提供では反って疑心暗鬼を増幅する。更に震災復興のための赤字国債発行による財政破綻懸念を払拭し、国債増発無しに復興資金のファイナンスが可能である事を国内外に明言することが急務である。明確な方向性を何一つ打ち出さないで情報隠匿を続ける政府の対応は国の根幹に悪影響を及ぼす見方を世界に植えつけてしまっている。
 
 大相撲八百長事件に相撲協会が一応の解決策を打ち出した。しかし以前書いたように「資本と経営の分離」を厳格に行わない限り根本的な解決にはならない。具体的にいえば「巨大な既得権益」を解消する組織改革を行い『健全な競技団体』へ脱却する事無しに八百長問題の根本的解決はありえない。

 大相撲は700名超の力士と105名の年寄り(親方)で構成された組織である。これを収入面から見ると力士の年収総額約18億円に対して年寄りの年収も約17億円と殆んど差がない。しかも力士が十分な収入を支給されるのが十両から幕内の短い期間であるのに対して年寄りは65歳の定年まで保証されている。実際の競技者の報酬に比して管理者層である年寄りがここまで優遇された歪な報酬体系が温存された組織は余りに異常である。いってみれば700名の若い競技者に105名の年寄りが寄生しているのが現在の「(財)日本相撲協会」という組織なのである。このあり様の根本的な改革こそ八百長問題解決の本質なのである。(以下に資料を記載する)

▼年寄りの総数105名、年寄りの平均年収約1600万円▼力士総数721名(平成22年9月場所)①横綱の年収4550万円(2名として算定、以下同じ)②大関3700万円(4名)③三役2600万円(6名)④平幕2000万円(28名)⑤十両1600万円(28名)⑥幕下90万円(120名)⑦三段目60万円(200名)⑧序二段48万円(256名)⑨序ノ口42万円(77名)(ウィキペディアより)

2011年4月4日月曜日

神話の崩壊

 風邪を罹いてしまった。定番の予兆である膝の悪寒と後頭部の間歇的な痛みが今回もあった。いつもなら体が温まる頃には治まるのに今回は一日中続いた。特に後頭部の痛みが夜中も止まなかったので病院へ行くことにした。肩こりではないかという妻の意見を入れて整形外科へいくと触診で右下後頭部の部位を特定した医師の指示でレントゲン写真を6枚撮影された。「脊椎に痛みの伴うような歪みが見られませんので原因が分かりません。MRIを撮ってみましょう。予約をして帰ってください」。エッ!?と思った。待ってくれよ、頭が痛くて夜も寝られなかった患者が貴方を頼ってここにきているのですよ。それなのに痛みを解消する応急処置も施さずに帰すんですか!
 結局こちらからの申し出でで温湿布薬を処方して貰うことができた。そしていつもの通り風邪の症状が治まると共に後頭部の痛みも消えていた。

 東北関東大震災の原発事故に終息の見通しが立たない。官房長官等による広報の『あやふやさ』が農産物の風評被害を甚大にしてしまった。出荷停止、摂取制限などと基準を不明確にしたまま地域を包括的に決定して発表したために農民の被害は想像以上の長さと深さになることは間違いない。何故こんなことになってしまったかの原因は『明確』である。発表に伴う「保証」を発表する側―政府であったり東電であったりペーパーを作成する官僚であったり―が認識しないままに「ことば」がひとり歩きしたからである。すべて『政府買取り』にすべきであった。役人は価格設定が困難だなどと屁理屈をいうに違いない。民主党のバラマキの最悪である「農家戸別補償」に比べればどんな暫定価格でもいいではないか。8割方の保証を発表時点で行い最終調整はずっと後でいい。とにかく即時補償することで「国がわれわれを護ってくれている」という安堵感を被災者に与えることが早期の時点で最も肝要事である。これまでの政府の対応のすべてに補償の裏づけがみられないことが被害を大きく深くしている。

 サルコジ大統領の緊急来日は原発事故に対する我国の対応が世界基準に照らして「不適切且つ不適時」であるという世界世論の表れであろう。我国原子力産業への信頼は地に落ちてしまった。

 「ものづくり世界一」という神話は今回またも傷つけられてしまった。